東京高等裁判所 平成6年(行ケ)294号 判決 1995年12月20日
アメリカ合衆国 テネシー州37352 リンチバーグピー・オー・ボックス 90エイ
原告
ジャック・ダニエル・デイステイラリー・レム・モトロウ・
プラプライアテリー・インコーポレーテッド
代表者
ガリソン・アール・コックス
訴訟代理人弁理士
小澤慶之輔
同 弁護士
小澤優一
大阪市中央区南船場三丁目5番17号
被告
菱屋株式会社
代表者代表取締役
岡部盛夫
主文
特許庁が、昭和60年審判第4746号事件について、平成6年7月25日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
原告は、主文と同旨の判決を求めた。
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
被告は、片仮名文字「ジャックダニエル」を横書きした別紙1表示の構成からなり、指定商品を第17類「被服、布製身回品、寝具類」として、昭和47年4月28日登録出願、同59年3月22日設定登録され、現に有効に存続する登録第1671213号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は、昭和60年3月13日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を昭和60年審判第4746号事件として審理し、平成6年7月25日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年9月5日、原告に送達された。
2 審決の理由
審決は、請求人(原告)提出の証拠(審判事件の甲第1号証の1~第5号証の2、原告商品の輸入販売元サントリー株式会社が作成したカタログ及び同社が原告商品を販売している状況の写真等)からは、請求人の略称と主張する「ジャックダニエル」の名称及び別紙2表示の引用A商標又は引用B商標が、本件商標の出願前に周知、著名であったとは認め難いとして、請求人の商標法4条1項8号及び15号に基づく主張を排斥し、本件商標登録を無効とすることはできないとした。
3 原告主張の審決取消事由
審決は、原告の略称であり、かつ、原告が商標権を有する引用各商標に含まれる「ジャックダニエル」の周知、著名性について、事実を誤認したものであり、違法として取り消されるべきである。
(1) 原告は、1886年に米国人Jasper "Jack" Newton Danielがアメリカ合衆国テネシー州に開設した蒸留所において製造を開始した、独特の製法によるウイスキーを製造販売する者であり、このウイスキーには、1887年以来「Jack Daniel’s」という名称が付されてきた。原告の販売する“Jack Daniel's Old Time No.7”は、いわゆるテネシーウイスキーのベストセラーである。したがって、ジャックダニエルの名称は、ウイスキーの商標のみならず、原告の略称として、昭和47年当時、すでに世界的に有名であった。
日本においては、「ジャックダニエル」ウイスキーは、昭和20年代より主に米軍のために輸入されていたが、昭和30年代に国内一般向けに販売が開始され、昭和45年4月よりサントリー株式会社が本格的な輸入を開始した。サントリー株式会社は、宣伝用パンフレットを作成、頒布し、少なくとも昭和46年11月に、全国紙である朝日、読売及び日本経済新聞に全面広告を掲載するなど、販売促進活動を活発に行った。「ジャックダニエル」の名称は、遅くともこのころまでに、原告のウイスキーの商標及びその生産者である原告の略称として、わが国においても著名となったことは明らかである。当時のデパートの歳暮の広告に商品の写真が掲載されていることからみても、「ジャックダニエル」ウイスキーがすでに著名であったことがわかる。
したがって、本件商標の登録出願日である昭和47年4月28日当時、「ジャックダニエル」の名称は、原告の略称として著名であったのであり、原告の承諾を得ることなく登録出願された本件商標は、商標法4条1項8号に該当し、同法46条1項1号により無効とされるべきである。
(2) 原告は、別紙2表示の引用A商標及び引用B商標の商標権者であり、原告がこの商標を付して製造販売する「ジャックダニエル」ウイスキーは、上記のとおり、昭和45年よりサントリー株式会社がわが国に本格的な輸入を開始し、活発な販売促進活動を行った結果、遅くとも昭和46年11月ころには、引用A商標及び引用B商標(いずれも「ジャックダニエル」の称呼を生ずる。)は、原告の商品に付する商標として周知著名となったものである。
ところで、商標「ジャックダニエル」は、もともと上記のとおりテネシーウイスキー「ジャックダニエル」の創始者の名前であり、原告の名称の一部に引き継がれてきたものであって、原告のいわゆるハウスマークである。また、この商標は、「ジャックダニエル」ウイスキーが世界的に有名になったことにより著名になったものであり、「ジャックダニエル」ウイスキーの名称を真似ることなく、独自にこのような商標を考え付くことはありえない。さらに、「ジャックダニエル」の商標に接した消費者は、その商標の付された商品のいかんにかかわらず、直ちに例外なく「ジャックダニエル」ウイスキーを想起することも明らかである。
「ジャックダニエル」商標のこのような性格からみると、被告がその商品に商標「ジャックダニエル」を付して販売した場合、消費者が、これを原告の業務にかかる製品であると認識することは、ほとんど必至であるといわなければならない。
したがって、被告の本件商標の登録出願は、商標法4条1項15号(平成3年法律第65号による改正前のもの)に該当し、同法46条1項1号により無効とされるべきである。
第3 被告は、適式の呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。
したがって、請求原因事実は被告において明らかに争わないものとして、自白したものとみなされる。
上記事実によれば、原告主張の取消事由は理由があり、本件商標は、商標法4条1項8号に該当し、同法46条1項1号により無効とされるべきであるから、審決は、取り消されるべきである。
よって、原告の請求を認容し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 押切瞳 裁判官 芝田俊文)
別紙1
<省略>
別紙2
<省略>
平成二年(ネ)第一〇八六号実用新案権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所昭和五八年(ワ)第二五四号)
判決
東京都荒川区荒川六丁目四七番一号
控訴人 株式会社マグリーダ
右代表者代表取締役 森田玉男
右訴訟代理人弁護士 吉川彰伍
東京都足立区花畑二丁目九番一六号
被控訴人 青木金属工業株式会社
右代表者代表取締役 青木善弘
右訴訟代理人弁護士 上村正二
同 石葉泰久
同 石川秀樹
同 田中愼一郎
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨
第二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり、訂正、削除、附加するほか、原判決の事実摘示(四頁八行ないし二〇頁五行)と同一であるから、ここにこれを引用する。
一 原判決の訂正、削除、附加
1 原判決五頁八行目の「製造販売し、」を「製造販売した。」と改め、同行目の「被告株式会社トーポ」から一〇行目の「展示した。」までを削る。
2 同一六頁五行目の「一般的であるから、本件考案の構成要件Eを充足しない。」を、「一般的である。したがって、控訴人製品の構造eにおける『間隙7』は、本件考案の構成Eにおける『磁気的間隙をおいて』に相当するものではなく、本件考案における『実質的に磁気的間隙を残すことなく』に相当するものであるから、本件考案の構成要件Eを充足しない。」と改める。
3 同一九頁五行目の「反するものである。」の次に、「また、被控訴人は、本件考案の出願前の昭和四八年六月ころから、本件考案と同一の構造の製品を製造販売していたものであって、本件考案は、その出願前に日本国内において公然実施されていたむのであるから、本件実用新案登録は無効とされるべきものである。被控訴人は、本件実用新案登録に右のような瑕疵があることを知りながら本訴請求に及んだものであって、この点からいっても本訴請求は権利の濫用である。」を加える。
4 原判決の事実摘示中の「被告ら」をいずれも「控訴人」と改める。
二 当審における新たな主張
(控訴人の相殺の抗弁)
1 控訴人は、昭和六二年九月二八日から平成二年八月二七日までの間、次の実用新案権(以下、「本件第二実用新案権」といい、その考案を「本件第二考案」という。)を有していた。
登録番号 第一四六九一一二号
考案の名称 靴、ランドセルに於ける蓋等の係止装置
出願日 昭和五二年一一月一〇日
出願公告日 昭和五六年一〇月二七日
登録日 昭和五八年一月一四日
2 本件第二考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載は、本判決添付の実用新案公報の該当項記載のとおりである。
3 本件第二考案は、次の構成要件から成るものである。
A 強磁性体製底版の中央に通孔を開設し、この通孔に強磁性体製柱突起を植設すると共に、この柱状突起の下方貫出部を以て逆U字状の止脚をリベッティングし、
B この底版の上面に、中央に同柱状突起より径大の通孔を有するドーナツ型の磁石を載置すると共に、当該磁石に天壁の中央に通孔を有する下面開口の筐体を被着して吸引部材を構成し、この吸引部材を鞄、ランドセル等本体に固定すると共に、これとは別個に強磁性体製基版の中央に通孔を開設し、この通孔に吸着時に上記の柱状突起の頂面に接合する上記の通孔より径小な強磁性体製柱状突起を植設すると共にこの柱状突起の上方貫出部を以てU字状の上脚をリベッティングして被吸引部材を構成し、
C この被吸引部材を蓋等に於ける上記の吸引部材に対応する個所に固定して成る鞄、ランドセルに於ける蓋等の係止装置。
4 被控訴人は、昭和六二年九月二八日から平成二年八月二七日までの間、業として別紙物件目録記載の製品(以下「被控訴人製品」という。)を製造販売した。
5 被控訴人製品の構造は、これを本件第二考案の構成と対応して説明すれば、次のとおりである。
a 強磁性体製底版の中央に通孔を開設し、この通孔に強磁性体製柱突起を植設すると共に、この柱状突起の下方貫出部を以って逆U字状の止脚をリベッティングし、
b この底版の上面に、中央に同柱状突起より径大の通孔を有するドーナツ型の磁石を載置すると共に、当該磁石に天壁の中央に通孔を有する下面開口の筐体を被着して吸引部材を構成し、この吸引部材を鞄等本体に固定すると共に、これとは別個に強磁性体製基版の中央に通孔を開設し、この通孔に吸着時に上記の柱状突起の頂面に接合する上記の通孔より径小な強磁性体製柱状突起を植設すると共にこの柱状突起の上方貫出部を以てU字状の上脚をリベッティングして被吸引部材を構築し、
c この被吸引部材を蓋等に於ける上記の吸引部材に対応する箇所に固定して成る鞄等に於ける蓋等の係止装置。
6 被控訴人製品の構造a、b、cは、本件第二考案の構成要件A、B、Cをそれぞれ充足し、被控訴人製品は、本件第二考案と同一の作用効果を奏する。
したがって、被控訴人製品は、本件第二考案の技術的範囲に属するものであり、被控訴人の被控訴人製品の製造販売は本件第二実用新案権を侵害するものである。
7 被控訴人は、故意又は過失により、前記4項の期間中に、約三億二七四三万四一七六円相当の被控訴人製品を売り上げ、右売上高の一五パーセントに当たる四九一一万五一二六円の純利益を得たものであり、控訴人は、被控訴人の本件第二実用新案権の侵害により、同額の損害を被った。
8 よって、仮に、被控訴人が控訴人に対して、本訴請求に係る債権を有するとしても、控訴人は被控訴人に対する前項の損害賠償請求債権をもって対当額において相殺する。
なお、被控訴人主張の債権も控訴人主張の債権も共に、実用新案権の侵害に基づく損害賠償請求債権であるが、両債権は、控訴人と被控訴人双方において、鞄等の係止装置を製造販売したという同一の事実から生じたものであり、相殺が禁止される理由はない。
(被控訴人の答弁)
控訴人の右主張1は知らない。同2は認める。同3ないし8は否認ないし争う。
第三 証拠関係
本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する本訴請求は正当と認めるものであるが、その理由は、次のとおり訂正、削除、附加するほか、原判決の理由説示(二〇頁九行ないし三五頁九行)と同一であるから、ここにこれを引用する。
1(一) 原判決の理由説示中の「被告ら」をいずれも「控訴人」と改める。
(二) 原判決二二頁七行目から八行目にかけての「磁気的間隙」を「磁気間隙」に、八行目の「突接」を「突設」にそれぞれ改める。
(三) 同二五頁八行目の「ない」の次に、「から、永久磁石3の上面と外面が真鍮薄板5により被覆されている控訴人製品は本件考案の構成要件Bを充足しない」を加える。
(四) 同二九頁一行目の「とができない。」の次に、「よって、右主張を前提として、控訴人製品の構造eは本件考案の構成要件Eを充足しない旨の控訴人の主張は理由がない。」を加える。
(五) 同二九頁末行の「認められるが」の次に、「(但し、甲第一二号証の三・四のうち、右認定に反する部分は採用できない。)」を加える。
(六) 同三〇頁三行目の「第八」の次に、「、第一六」を加える。
(七) 同三一頁一行目の「被告トーポ」から「展示して」までを削る。
(八) 同三三頁一行目の「認めるに足りる証拠はない。」の次に、「また、控訴人は、被控訴人は、本件考案の出願前の昭和四八年六月ころから、本件考案と同一の構造の製品を製造販売していたものであって、本件考案は、その出願前に日本国内において公然実施されていたものであるから、本件実用新案登録は無効とされるべきものであるところ、被控訴人は、本件実用新案登録に右のような瑕疵があることを知りながら本訴請求に及んだものであって、この点からいっても本訴請求は権利の濫用である旨主張する。しかし、成立に争いのない甲第一四号証、乙第一三号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人が、昭和六三年五月二七日に、右公然実施の事実を無効理由としてなした本件実用新案登録の無効審判請求事件(昭和六三年審判第九六八九号)について、平成六年一二月二八日、請求不成立の審決がなされ、右審決は確定したことが認められるから、控訴人の右主張は採用できない。」を加える。
(九) 同三四頁八行目から三五頁五行目までを削る。
2 当審における控訴人の新たな主張(相殺の抗弁)について、次のとおり判断する。
「成立に争いのない乙第一八、第一九号証によれば、控訴人は、昭和六二年九月二八日から平成二年八月二七日までの間、本件第二実用新案権を有していたことが認められ、本件第二考案の実用新案登録請求の範囲の記載が本判決添付の実用新案公報の該当項記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。
ところで、控訴人は、被控訴人製品の製造販売は本件第二実用新案権を侵害するものであり、それによって四九一一万五一二六円の損害を被ったとして、右損害賠償請求債権をもって本訴請求に係る債権と対当額において相殺する旨主張するが、不法行為によって生じた債務を負担する者は、相手方たる債権者に対し不法行為によって生じた反対債権を有する場合にも相殺をもって対抗することができないものと解すべきであるから(大判昭三・一〇・一三、民集七・七八〇参照)、控訴人が被控訴人に対し、右主張の損害賠償請求債権を有するか否かについて検討するまでもなく、控訴人の右主張は失当である。控訴人は、被控訴人主張の債権及び控訴人主張の債権は、控訴人と被控訴人双方において、鞄等の係止装置を製造販売したという同一の事実から生じたものであり、相殺が禁止される理由はない旨主張するところ、仮に、同一の事実から生じた双方的不法行為による損害賠償請求債権については互いに相殺を認めるべきであるとする考え方があるとしても、控訴人の控訴人製品の製造販売と、被控訴人の被控訴人製品の製造販売(認定できるものとして)が同一の事実関係にないことは明らかであって、控訴人の右主張は理由がない。
したがって、控訴人の相殺の抗弁は採用できない。」
二 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一八民事部
裁判長裁判官 伊藤博
裁判官 濵崎浩一
裁判官 市川正巳
<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告
<12>実用新案公報(Y2) 昭56-45985
<51>Int.Cl.3E 05 C 15/00 A 45 C 13/10 識別記号 庁内整理番号 6478-2E 6455-3B <24><44>公告 昭和56年(1981)10月27日
<54>鞄、ランドセルに於ける蓋等の係止装置
<21>実願 昭52-150927
<22>出願 昭52(1977)11月10日
公開 昭54-77799
<43>昭54(1979)6月2日
<72>考案者 大峡幹男
東京都足立区千住4丁目12番
<71>出願人 大峡幹男
東京都足立区千住4丁目12番
<74>代理人 弁理士 杉山泰三
<56>引用文献
実開 昭51-27697(JP、U)
実公 昭25-9300(JP、Y1)
<57>実用新案登録請求の範囲
強磁性体製底版1の中央に通孔1'を開設し、この通孔1'に強磁性体製柱突起2を植設すると共にこの柱状突起2の下方貫出部を以て逆U字状の止脚3をリベツテイングし、この底版1の上面に、中央に同柱状突起2より径大の通孔4'を有するドーナツ型の磁石4を載置すると共に当該磁石4に天壁の中央に通孔5'を有する下面開口の筐体5を被着して吸引部材6を構成し、この吸引部材6を鞄、ランドセル等本体イに固定すると共にこれとは別個に強磁性体製基版8の中央に通孔8'を開設し、この通孔に8'に吸着時に上記の柱状突起2の頂面に接合する上記の通孔4'、5'より径小な強磁性体製柱状突起9を植設すると共にこの柱状突起9の上方貫出部を以てU字状の上脚10をリベツテイングして被吸引部材11を構成し、この被吸引部材11を蓋等に於ける上記の吸引部材6に対応する個所に固定して成る鞄、ランドセルに於ける蓋等の係止装置。
考案の詳細な説明
本考案は鞄、ランドセルに於ける蓋等の係止装置の改良に関するものであつて、図示せる実施例は強磁性体製底版の中央に通孔1'を開設し、この通孔1'に強磁性体製柱状突起2を植設すると共にこの柱状突起2の下方貫出部を以て逆U字状の止脚3をリベツテイングしこの底版1の上面に、中央に同柱状突起2より径大の通孔4'を有するドーナツ型のフエライト磁石4を載置すると共に当該フエライト磁石4に天壁の中央に通孔5'を有する下面開口の真鍮板製筐体5を、同筐体5の開口縁に設けた止爪7を内方に向つて折曲することにより被着して吸引部材6を構成し、この吸引部材6をハンドバツグ本体イに上記の止脚3を以て固定すると共にこれとは別個に強性磁体製基版8の中央に通孔8'を開設し、この通孔8'に吸着時に上記の柱状突起2の頂面に接合する上記の通孔4'、5'より径小な強磁性体製柱状突起9を植設すると共にこの柱状突起9の上方貫出部を以てU字状の止脚10をリベツテイングして被吸引部材11を構成し、この被吸引部材11を蓋口に於ける上記の吸引部材6に対応する個所に止脚10を以て固定したものである。
尚、本考案は筐体5をプラスチツク製としカラフルにする場合もある。
本考案は叙上の如き構成になるので被吸引部材11を吸引部材6に吸着せしめることによつて蓋を閉止の状態に確実に維持し得るものであるが特に本考案に於ては強磁性体製底版1の中央に通孔1'を開設し、この通孔1'に強磁性体製柱状突起2を植設すると共にこの柱状突起2の下方貫通部を以て逆U字状の止脚3をリベツテイングすると共に強磁性体製基版8'の中央に通孔8'を開設し、この通孔8'に吸着時に上記の柱状突起2の頂面に接合する上記の通孔4'、5'より径小な強磁性体製柱状突起9を植設すると共にこの柱状突起9の上方貫出部を以てU字状の止脚10をリベツテイングするようにしたので底版1及び基版8に対する各吸着用の柱状突起2.9の取付と止脚3.10の取付けを同時に且つ確固と為し得る効果がある。
図面の簡単な説明
図は本考案鞄、ランドセルに於ける蓋等の係止装置の実施例を示すものであつて、第1図は全体の斜視図、第2図は被吸引部材を吸引部材に吸着した状態を示す断面図、第3図は分解斜視図である。
1……底版、1'……通孔、2……突起、3……止脚、4……磁石、4'……通孔、5……筐体、5'……通孔、6……吸引部材、イ……ハンドバツク本体、8……基版、8'……通孔、9……突起、10……止脚、11……被吸引部材、口……蓋、13……止脚。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
物件目録
第一図は正面図、第二図は平面図、第三図は底面図、第四図は中央縦断正面図である。この鞄等の磁石錠は上下面を磁極とする環状の永久磁石3の上面および外面並びに内側面の一部を真鍮薄板で被覆すると共に、当該磁極側(真鍮薄板5の介在のもとに)へ鉄板4を離接可能に当接吸着させてあり、前記永久磁石3の中央孔9内へ前記真鍮薄板5を折り曲げると共に、前記中央孔9内へ前記鉄板4の中央部へ固定した円柱状の突起6を遊嵌する。したがって、中央孔内へ折曲した真鍮薄板5と円柱状突起6との間には、僅かに間隙を有する。また、前記中央孔には真鍮薄板5の一部が折り曲げられており、前記永久磁石3の中央孔9の内壁と、永久磁石3の下面に当接され中央孔9内に直立している円板状鉄板14の円柱状突起10との間に間隙7を形成している。
また、前記永久磁石3の下面には円板状鉄板14が当接され、前記真鍮薄板5の下縁爪片5aで包持固着してあると共に、前記鉄板14の中央部に固着した円柱状の突起10が前記中央孔9内へ実質的に間隙7を保って嵌入されている。前記突起6、10の高さはほぼ同一であって、永久磁石3の中央孔9の内部で接する寸法にしてある。図中1、2は前記鉄板14、4の上下面へ固着した脚片であって、鉄板4、14、と突起6、10の小径側6a、10aを挿入し、その突出端をかしめて固着できる。
前記脚片は、袋物などの構成材(例えば皮革または布その他)に刺突した後、折り曲げて掛止金を固着する。したがって、取付鋲などと同一目的、同一効果を奏するものである。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
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実用新案公報
<省略>